銀座の高級店で流石のお寿司を頂く。驚き、喜び、納得の素材、ワザ、もてなしに目尻を下げ、鼻孔を膨らませ、口角を上げて幸せなひとときを過ごせたのである。 素材の良さは当然だが、他店にない工夫が興味深い。例えば、最初の茶碗蒸しは写真のようにイクラが敷き詰めてあり、眼を楽しませてくれる。なお、具材は百合根だけである。 写真#1は、ネギトロの握りである。赤い部分の下にはきちんとシャリが存在している。葱の存在感を抑えていて脂の甘みを存分に楽しめる仕掛けになっている。軍艦だと海苔の印象がまず先に来て、しかもすきみの舌触りの中に夾雑物として海苔が出てくる感があったことに気が付いた。もちろん、軍艦巻きのほうが口内に変化があって楽しいのであるが、圧倒的なマグロの脂に全身全霊を委ねてしまうのもたまには宜しいかなと思わされるのである。 なお、どろどろのすきみを握るにはある特殊なワザを使うが、企業秘密なので、知りたい方は現地へ赴いて確認されたい。 生ビールもサッポロの「白穂乃香(しろほのか)」しか置いていない。そして、これが素人が買えない飲食店専用ブランドで、非常に細かい泡で、スルスルと喉を通っていく。恥ずかしい話だが、ランチビールを生まれて初めてお替わりしてしまったのである。 撮影し忘れた握りがある。メジマグロの握りである。年齢の若いマグロをめじと呼び、親マグロとの違いはBEEF(牛肉)とVEAL(子牛肉)の違いがある。熟成期間や漁場(餌)、季節の違いはあるだろうが、これほど目の詰んだ筋肉質でしかもサクリと歯が入るタネは経験がない。 個々の握りを描写してもきりがないので、登場者の構成を述べおく。写真#8は大根の漬け物で、ここで4拍の全休符がある。この香の物の塩気と香りがとても控えめで、次のネタの味や香りに影響を残さないのである。これも人生でこれほど穏やかな漬け物を頂いたのは初めてである。 写真#10は毛ガニの握りである、淡泊な蟹肉をほぐし、蟹味噌を和えることで味に奥行きをつけ、北国の海岸に斜めに降り注ぐ雪の情景が浮かんでくるのである。 写真#14は、雲丹のオプションである。通常は右側の箱入りの馬糞雲丹で、右の小さい皿がオプションの紫雲丹である。板さんが優しくオプションになさいますかと尋ねてくる。そして、流石に銀座なのでオプションの値段を訊く客はおらず、折角だからと紫雲丹を選ぶ客もいるのである。私がどちらを選んだのかは写真を観て察して欲しい。 話は前後するが、写真#11は赤貝の紐をつかった「ヒモキュウ」で、隣の客の赤貝がとてもウマそうだったので、コース外で特注してしまった。コリコリした紐の歯応えと海の匂い、シャキシャキの胡瓜、香り高い海苔に、白胡麻のアクセントが堪らない。 なお私の選んだ「梅」コースでは赤貝は供されないのである。赤貝に入れる包丁のスジも他店と異なることに気が付いたが、これも企業秘密なのでここには記さないでおく。 しめ鯖も思い出した。身の厚みだけでなく、どういう仕事なのか食感が口内の粘膜に官能的な刺激を与えて身もだえしてしまうのである。 以下は、思い出話: かなり前のことであるが、この店の並びの飲み屋からいい気分に酔って出てきたら、おのでらの前に大きな黒塗りの車が停まっていて、見るからに偉い人と思われる人物が乗り込んで、店の方々がお見送りをしていたのを目撃した。ただただ別世界の店だなあ。一生に一度も行くことはない店なのだなあと諦念していたのである。 しかし、Rettyの投稿でお安いランチがあることを知り、一番安い「梅」コースを予約したのである。(実際のコース名は「花」)ランチなら少し背伸びで手が届く値段である。リピート決定である。 名店に出会える機会を作って頂いたRetty運営の皆様とRettyの投稿仲間にここでお礼をしておきたい。

佐藤 佑樹 一参通知ありがとうございます。 ランチとは言え、銀座で頂く回らないお鮨とは思えない値段設定ですよね! ネギトロを握るワザが気になります(笑)
2022/02/21
Hitoshi Tanaka 佐藤さま、返信が遅れてすみません。実はネギトロを握るワザは失念してしまったので、もう一度行かねばならないと思っております。
2022/03/31
佐藤 佑樹 返信ありがとうございます。 ネギトロを握るワザが気になるので再訪しようと思います(笑)
2022/03/31