先日行った菊寿司の大将が修行された店ということで訪問。 「寿し屋の勘八 銀座本店」におけるおまかせコースは、初夏という移ろいやすい季節の輪郭を、伝統的な江戸前の技法と最先端の熟成技術によって鮮やかに描き出した構成。 1. 季節を五感で味わう一級の「つまみ」と緩急の妙 特筆すべきは、コースの導入部における季節感の演出と胃をひらくアプローチ。先陣を切る「稚鮎」のほろ苦さは、まさに初夏の訪れを告げるファンファーレ。続く「蕪、アスパラ、フルーツトマト」という瑞々しい夏野菜を、あえて濃厚な「自家製ゴマだれ」で受け止めることで、素材の水っぽさを完全にマスキングし、リッチな前菜へと昇華させている。ここで「アサリ出汁」を挟み、滋味深いコハク酸の旨味で胃を温めさせる動線は、これから始まるストーリーへの布石。 焼き物への流れも秀逸である。「平貝の磯部焼き」の香ばしさと、初夏に最も脂が乗る「穴子の串焼き」の力強い食感。これらに対し、新潟の銘酒「〆張鶴」が持つ、スッキリとした透明感と奥にある芳醇な米の旨味が完璧に同調している。後半への架け橋となる「梅肉餡の茶碗蒸し」は、卵の優しい甘みの中に走る鋭い酸味が、ここまでの脂や塩分をリセットする極めて優秀な清涼剤として機能。 2. 変態的とも言える「熟成」へのこだわりと技術の結晶(特殊な器具で魚の動脈から水を流し、完ぺきに血抜きしているとのこと)。このコースの真骨頂は、中盤から後半にかけて炸裂する「時間(熟成)」のコントロール。白身の「マコガレイ」を醤油ではなく、日本酒に梅干しや鰹節を合わせて煮詰めた伝統の「煎り酒」で合わせるセンスに始まり、仕込みの緻密さは握りで頂点に達する。「3日寝かせた鯵」は、徹底した血抜きによって青魚特有の生臭さを完全に排除し、ねっとりとした妖艶な質感へと変貌している。「6日寝かした真鯛」が持つ、限界まで引き出されたアミノ酸の余韻に浸ったのち、コースの白眉である「2週間熟成のかんぱち」、そして「1週間寝かせた豪州産インドマグロのトロ」へと続く流れは、まさに圧倒的の一言。水分が抜け、脂が身全体に均一に回ったトロは、シャリの体温と同調した瞬間に文字通り口中で「溶ける」官能的な食感を生み出している。 3. 総評:緻密に計算された、完璧なるストーリー 磯の香りが贅沢に立ち上る「浜名湖の生海苔の味噌汁」で一度ホッとさせつつ、終盤は江戸前の華である「小肌」の凛とした締め加減、クリーミーな「馬糞雲丹」、そしてホロリと解けるタレの「穴子」で最高潮のまま締めくくる。最後の「マンゴーシャーベット」にいたるまで、引き算と足し算のバランスが崩れる瞬間が一切ない。伝統を重んじながらも、現代の美食家を唸らせるサイエンティフィックな熟成アプローチを融合させた、満足度の高いコース。 この日のメニューは以下の通り。 お通し+Sドライ ・稚鮎 ・蕪 アスパラ フルーツトマト 自家製ゴマだれ ・アサリ出汁 つまみ ・マコガレイ 煎り酒で ・初鰹 ・鯵 血抜きして3日寝かせてる ・平貝の磯部焼き 〆張鶴 新潟スッキリ&芳醇 ・穴子の串焼き 初夏が旬 ・梅肉餡の茶碗蒸し 握り ・真鯛 6日寝かし ・赤貝 ・鰯 ・かんぱち 2週間 ・トロ オーストラリアインドマグロ 1週間 ・浜名湖産生海苔の味噌汁 ・小肌 ・馬糞雲丹 ・穴子 デザート ・マンゴーシャーベット #82
写真と本文をすべて表示江戸前寿司の伝統を守りつつ、時流に合ったお寿司を食べられるこだわりの店
駅から近い
個室あり
禁煙
深夜でも入れる


















