ちょっと大事件です。
姫路のカレーを探索していたら、伝説のカレーと遭遇してしまったのですから。
山陽電車網干線西飾磨駅から徒歩10分ほどのロードサイドにあるステーキハウス。
『ステーキ&セイロンカレー 大樹』(だいじゅ)
「ステーキ&セイロンカレー」といえば、どうしても気になってしまいます。
ひょっとして・・・
ひょっとすると。
店内は、素晴らしいという意味でとても年季が入っています。
往年のサントリーのCMに「時は流れない。それは積み重なる。」というコピーがありましたが、まさにそんな感じ。
L字カウンターの脇にはワインのストックが。
そう、ステーキハウスですから赤ワインは欠かせませんよね。
★グラスワイン赤 ¥770
けれどオーダーしたのはステーキではありません。
(ステーキも食べたかったけど・・・)
気になりまくる「セイロンカレー」です。
★【セイロンカレー】シーフードカレー ¥2300
おぉ、やはり!
「セイロンカリー」という名前ではありますが、セイロンつまり今のスリランカカレーではなく、
大阪で一世を風靡した「オリムピック」のセイロンカリーそのものではありませんか。
戦後すぐ、大阪で開業したステーキ&洋食のお店『オリムピック』。
そこで提供されていた「セイロンカリー」という名の独特カレーこそがまさにこれ。
ある時訪れたスリランカ人に「スパイスを提供するからカレーを出してくれ」と持ち掛けられランチでカレーを出したところ、これが大評判に。
「セイロン風カリー」と名付けられたこのカレーはシャバシャバスパイシーでありながら、当時の料理長がフレンチを主に学んでいたためスリランカ現地とは異なりブイヨンを用いた、ほかに類を見ないものだったそうです。
一説には、大阪スパイスカレーブームのはるか前から存在した「スパイスカレーのはしり」とも言われる伝説的カレーなのですが『オリムピック』なき後は、『オリムピック』出身者が独立した各店に引き継がれることに。
南森町『ぐりるKent』、大江橋『ステーキ榊原』、夙川『ステーキハウス たけうち』。
しかし『グリルケント』『タケウチ』はすでに閉店、現在は『榊原』の水曜限定ランチとして提供されるのみとなりました。
そのほか、東京立川に『タケウチ』店主の息子さんが営む『シギリヤ』というお店でそのカレーが受け継がれている他、大阪『カルダモン』で時折限定でオリムピックのセイロンカレーを再現したカレーが提供されています。
・・・と、認識していたのですが、この姫路のステーキハウスで何故そのカレーが?
ポットに入ったスープ状のカレーには大根、ニンジンがたっぷり。
野菜の旨味、酸味がしっかり感じられ、辛さは控えめ。
フレンチの技法が生かされていることがよくわかります。
別添えライスのプレートには、ステーキの鉄板で焼かれたホタテ、イカ、海老のソテーが。
これは美味いに決まっていますね。
そのまま食べても良いですが、その上からセイロンカリーをかけていただけば、海鮮の香ばしさがカレーに乗って味わいがグッと増します。
『オリムピック』ではイカの塩辛なんてモノも含め、カレーの薬味がたくさんあったのですが、ここでは福神漬け、らっきょ、玉葱と長芋の醤油漬に絞られています。
この玉葱と長芋の醤油漬がまた美味しくて、家に常備したいほど。
選べる食後のデザートはこちらをチョイス。
◎抹茶ババロア
創業以来作り続けている伝統の一品だそうです。
かなり濃厚な抹茶の風味がたまりません。
良いお口直しとなりました。
それにしても、一体なぜこのお店に『オリムピック』譲りのセイロンカリーが??
「ひょっとして『オリムピック』とご関係が・・・」と遠慮がちに訊いてみたところ、
有り難いことに色々お話を伺うことができました。
お話を伺った料理長の大下さん(ちなみに『大樹』という店名は彼の苗字と名前から一文字ずつ取ったものです)はなんと50年ほど前に『オリムピック』の厨房で働いていた方でした。
当時は10数人いたシェフ陣の中で、榊原さんがチーフで竹内さんが2番手だったとのこと。
そのころの写真も見せてくださいました。
さらに「セイロンカリーは私が働いていたときにはもう、20年前からあったはず。」だそうで、
つまりは今から70年ほど前の1950年頃、70年ほど前からあったことに。
大阪スパイスカレーのはるかはるか昔から存在したことは間違いありません。
大下さん自身は『オリムピック』で2、3年働いたあと、神戸元町五丁目の『ハナワグリル』でまた2、3年勤務。
1981年にこの『大樹』をオープンしました。
つまりこの地でもすでに40年以上。
「当時の『オリムピック』の厨房組で今でもカレー出してるの