
季節の変わり目に吹く風。
乾いた春の嵐に、木蓮の蕾が揺れる夜。
なんだか今宵はワインの気分だ、とスプリングコートを羽織って一人、外からは中の様子が窺い知れないスペインバルへ。
こんな夜は薄暗い店内にココロが落ち着く。少し疲れているのかな…。
カウンターに座り、目の前の黒板のメニューを眺める。ワインは料理に合わせよう。
お通しで出された鴨のハムがしっとりして美味しい。ピリ辛のキノコのトマトソース煮もまたなかなか美味。
赤から入ろうかと頼んだグラスワインは、比較的甘みが強いタイプ。
たっぷり入れてくれるのは嬉しい。
前菜4種盛りをオーダーし、ゆっくり店内を眺める。10名ぐらいの個室、2人用テーブル席には年の差カップル、なるほど密会向きな半個室だ。奥の小部屋ではオトナ女子会が開かれているようだ。この暗い店内にいると、外の世界から隔離され、スペインの田舎の小径にあるバルで一人呑んでいるかのような居心地よさ。
前菜4種盛りは生ハム2種、スペインオムレツ、キャロットラペ、ポテトサラダ。
パプリカの刺激が効いたポテサラはマッシュタイプでバゲットに塗って食べると美味しいかも。
キャロットラペは繊細に刻まれ、オリーブ薫るオトナ味。爽やかで美味しい。
柔らかすぎず硬すぎずスペインオムレツがまたケチャップに合ってワインが進み、ゆっくり時間が流れる。
小エビのアヒージョを頼もうかと悩んだが、お隣のおじさまが頼まれたので、なんだか真似してるようなのも嫌で、アンチョビと青じそのピッツァに。そんな気分の夜なのだ。
白ワインもグラスワインはやや甘みがあるタイプ。
ピッツァは薄パリ。アンチョビの塩気と青じその爽やかさがベストマッチ。一人で一枚食べても胃もたれなし。
ちょっとささくれた気分が柔らかくなって
良かった。
またこんな夜に一人で静かに飲みに来よう。