経験豊富なご主人が腕を振るう、和食と蕎麦をお酒と共に楽しめる蕎麦割烹。
蕎麦前で味わう「8種の前菜盛り合わせ」も魅力のひとつ。
曳舟に2024年4月30日にオープンした「蕎麦割烹 ながの」。
店主の永野清二さんは、数々の和食店で20年の経験を積み、ミシュラン・ビブグルマン獲得の千歳烏山「東白庵かりべ」で修業。
蕎麦界を革新した苅部政一氏の意思を受け継ぎ、新しい挑戦を続けている。
全国から厳選した在来種の蕎麦の実を、毎日石臼で挽き、手打ちにこだわる。
この日は前日の予約がすでに満席だったため、13時過ぎの空きを狙って訪問。
到着すると2名が並んでおり、その後に続く。
女将さんが外に出てきて「30分以上はかかる」とのこと。
了承して待つこと約30分、声がかかりテーブル席へ案内された。
店内は厨房を望むカウンターとテーブル席を合わせて14席。
木の質感を生かした内装は柔らかで温かみがあり、ご夫婦で営む家庭的な空気が心地よい。
まずはお酒と前菜盛り合わせを注文し、その後の料理を都度頼んでいく。
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〇 十水 特別純米酒(1,100円/一合)
▪️蕎麦豆腐(お通し)
ぷるんとした舌触りと滑らかな喉越し。
スタートから蕎麦の香りを感じられる、嬉しい一品。
〇 睡龍 大和 特別純米(990円/一合)
▪️前菜盛り合わせ8点盛(1,980円)
旬の食材を詰め合わせた前菜盛り合わせ。
8点盛と書かれていながら、実際は9種の盛り合わせという心遣いが嬉しい。
・才巻海老味噌漬焼
・にしん、桜えび磯辺揚げ
・ツルムラサキ胡麻浸し
・きのこそばの実お浸し
・もずく酢
・柿、ナッツ、クリームチーズ白和え
・青ぜんまいうま煮
・にしんと昆布の煮物
・たこの煮物
才巻海老は頭から尻尾まで丸ごと食べられ、味噌の旨みが中までしっかり染みている。
桜えびの香ばしさとにしんの深い味わいが重なる磯辺揚げも印象的。
海苔の風味が後味を引き立てる。
〇 雪の茅舎 純米吟醸(1,100円/一合)
▪️茨城土浦 蓮根グランプリ最優秀賞 市川蓮根と秋刀魚の天ぷら(1,320円)
・イチジク
・梅と紫蘇のソース
梅紫蘇ソースは秋刀魚につけて味わう。
軽やかな衣の中にふっくらとした身が包まれ、香りと脂ののりが絶妙。
厚めにカットされた蓮根はシャクっとした歯ざわりとホクホク感が共存し、自然な甘みが広がる。
〇 ZAO Inspiration kuranohana(1,100円/一合)
▪️そばがき(1,320円)
・福井県永平寺町の在来種
蕎麦粉と水のみで仕上げたシンプルなそばがき。
もっちりとした弾力と滑らかさの中に、蕎麦の香りがふわりと広がる。
濃厚な蕎麦湯は醤油を少し落として、最後まで楽しめる。
〇 十四代 本丸 秘伝玉返し(1,600円/一合)
▪️二色そば(1,870円)
・千葉成田 初夏そば
一枚目はせいろそば、二枚目は「粗挽き田舎せいろ」「かけそば」「小にしんそば」から選べる。
・せいろそば
細めながら角が立ち、コシと喉越しのよい蕎麦。
まずはそのままで風味を楽しみ、続いて濃いめのつゆにくぐらせる。
出汁の旨みとキレのある味わいに、江戸前らしさを感じる。
・小にしんそば
時間をかけて炊かれた鰊は、箸を入れるとほろりと崩れる柔らかさ。
中までしっかりと味が染み、つゆとの相性も抜群。
温かい出汁が香る優しいつゆが、蕎麦を包み込む。
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お通しから心を掴まれ、前菜9種に舌鼓。
天ぷらやそばがきを含め、蕎麦前と地酒を存分に楽しんだ後にいただく手打ち蕎麦は格別。
コース仕立てのように、自分好みで組み立てられるのも魅力。
真剣な眼差しで料理と向き合うご主人と、柔らかく店を支える女将さん。
二人の呼吸の合った連携が心地よく、温かな時間が流れる。
立地は決して恵まれてはいないが、常連と新規の客が絶えず訪れ、人気の高さがうかがえる。
今後ますますの飛躍が期待される、再訪必至の一軒。