ハンバーグ定食に敗北した成人男性の末路
腹が減った。 いや、 減ったという表現では足りない。 俺の胃袋は 「米。」 しか言えなくなっていた。 人間の三大欲求。 睡眠。 性欲。 そして 定食。 店に入る。 メニューを見る。 ハンバーグ。 とんかつ。 しょうが焼き。 全部好き。 選べない。 人類最大の問題。 「何食べる?」 これ。 ノーベル賞取れる。 迷う。 三分。 五分。 七分。 店員さんが 「決まりましたか?」 って聞いてきた。 決まる訳ない。 全部好き。 結局 ハンバーグとカツ。 欲望のハイブリッド。 待つ。 来る。 …… ………。 ……………。 デカ。 待て。 定食じゃない。 地形や。 皿の上に 山脈がある。 左。 ハンバーグ。 右。 カツ。 奥。 ナポリタン。 さらにサラダ。 さらに味噌汁。 さらにライス。 日本の食文化、 詰め込みすぎ。 一口。 ハンバーグ。 フワッ。 ジュワッ。 肉汁。 洪水。 口の中、 避難警報。 デミグラス。 濃い。 深い。 うまい。 俺 「これ飲み物?」 違う。 でも飲める。 ライス。 突撃。 合う。 合いすぎる。 米 「仕事します。」 最高。 次。 カツ。 サク。 いや ザク。 装甲ある。 でも中。 やわらか。 衣 「俺が守る。」 肉 「ありがとう。」 友情。 感動。 映画化決定。 ナポリタン。 何でおるん? でも食う。 うまい。 完全に 「幼稚園の頃の夢」 みたいな味。 大人になっても好き。 サラダ。 シャキ。 健康。 たぶん今日一瞬だけ健康。 その五秒後に デミグラス。 意味ない。 途中で思った。 この皿、 仲悪いやつおらん。 全員人気者。 クラスで言うと ハンバーグが陽キャ。 カツが体育会系。 ナポリタンがお調子者。 サラダが学級委員。 ライスが担任。 味噌汁が校長先生。 誰一人仕事サボらん。 完璧。 ライスおかわりしたい。 でも まだ皿に肉がいる。 胃袋 「いける。」 脳 「無理。」 胃袋 「いける。」 脳 「いや無理。」 胃袋 「黙れ。」 勝者。 胃袋。 完食。 店員さん 「ありがとうございました。」 違う。 こっちや。 ありがとう。 帰る。 立つ。 重い。 地球の重力 今日だけ二倍。 駅まで歩く。 五分。 長い。 普段一分。 今日は五時間。 腹が 「帰りたくない。」 って言ってる。 電車乗る。 座る。 寝る。 起きる。 まだ満腹。 家着く。 母親 「夜ご飯あるよ。」 俺 「無理。」 母親 「何食べたん。」 俺 「人生。」 夜。 寝る。 夢。 ハンバーグ。 走ってる。 カツ。 追いかけてる。 ナポリタン。 応援してる。 意味分からん。 翌朝。 体重計。 乗る。 数字見た。 見なかったことにした。 科学って便利。 結論。 この店は 洋食屋じゃない。 「幸福を炭水化物で物理的に殴ってくる施設」である。 最近おしゃれなカフェで 「泡」とか 「エスプーマ」とか 「一口サイズ」とか そういう料理を食べることが増えた。 それも好き。 でも、 たまに人間は 「黙って肉。」 「黙って米。」 「黙ってデミグラス。」 という日がある。 そんな日にこの店へ来ると、 食事ではなく 「生きててよかった。」 を食べることになる。 帰る頃には満腹じゃない。 満足という概念そのものになっていた。 #椎名町 #洋食 #お得なランチセット
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