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1000投稿 akira i
【ユカテコに纏わるエトセトラ】「今日のライブの後、晩飯どうする？」「メキシカンが良くない？」「いいね。」彼は今からおよそ25年ほど前に、ユカタン半島を1ヶ月ほど旅をした友人だ。カンクンから入ってチェンイツァー、ウシュマル、パレンケというマヤ文明の遺跡見て回り、地方の日本人などいない町で、暮らすようにして過ごしていた。あの時の強い日差しと、それが生み出す濃厚な黒のコントラストに彩られた景色は、いまだに忘れることがない。あれから私はさらに2度、メキシコを訪れている。まあ言えば、我々はメキシコ文化に比較的明るいほうだ。 G24の影響ではないと思うが、ミナミの街に人は少ない。飲食店の多くも扉を閉ざしていて、いつも行くオラタコスバーは「今日はもうメシがないねん」と言われてしまった。さて、どうしよう。とグーグルマップで検索すると、バー「みまた」さんのあるビルの6Fに、エルチャロという店があった。ちょっと、行ってみようか。「やってるかな〜」と扉に手をかけると見事にすうっ、と開いた。スナックの居抜きのような店内に、女性のお客さんが一人と、日本人の高齢のマスター。およそメキシカンの要素が極限に薄い雰囲気である。ドスエキスはあるか聞いたら、ビールはアミーゴとコロナだけ。じゃあアミーゴで、と飲んだそれはライムジュースの入ったセルベッサで、イギリスで作っているものだった。コロナに切り替えて、タコスとチリコンカンを注文。スペイン語が堪能な女性のお客さんは、エルチャロの前にあるペルー料理の店で働いていて、そこに戻ると出て行った。後から来てね！ぜったいだからね！と、ペルー人のような言葉を言い残して。タコスが出てきた。牛、豚、ワカモレ、サルサ。トルティーヤの入っている布の包みを開けると、実にいい香りがする。匂いの記憶は消えることがない。「アメリカのテックスメックスなんかは小麦とか、小麦粉とコーンでつくったりしますけど、これはホワイトコーン100％」とマスターが言う。アメリカでよく出てくるハードシェルはイエローコーンのフライで、あれはメキシコのタコスとは全く関係がない。少なくとも、僕たちは一度もあのハードシェルのタコスには1ヶ月かけてもお目にかからなかったから。それぞれ具をのせて、食べてみた。素晴らしい出来栄えだ。マスター、すごく美味しい。と言ったらムーチョグラシアス！と陽気に答えてくれた。じわじわくる。この、どうでもいいような内装がともすればメリダの街の、常連客だけがくるような飯屋と思えなくもない。これうめーな。まじでうめーな。我々は本当に毎日タコスを食べていて、それはタコスしかない、という理由以上にタコスがずば抜けて美味かったからだ。あれはきっと、トルティーヤの生地が重要だったのだろう。極めてタコスに我々はウルサイと思うが、全くもって完璧な味である。チリコンカンはテックスメックス風で、こちらも素晴らしく美味かった。聞けば、南で33年メキシコ料理屋をやっているという相当な草分けである。見た目はとてもメキシコ料理のシェフに見えない人だけれど、スペイン語も堪能だし文化的知識も豊富だ。人は見かけによらない。マスターが、メキシコの思い出を聞かせてくれた。私は歌が歌えたので、メキシコのお金持ちに招待されて、上げ膳据え膳で屋敷に寝泊まりさせてもらったことがあるんですと。特別うまいわけではないけど、30年前に日本人が、メキシコの歌をちゃんと歌えるのが面白かったのでしょう、白人が羽織袴で浪曲を歌い切るようなものですから、と笑っている。それでは、と一曲お願いした。何を歌います？と言って僕がジブシーキングスのボラーレと言ったら、あれはもともとカンツォーネでイタリアの歌をスペイン系フランス人がアレンジしたものだ、あれはね、難しいんです。といいながらバラバラ！っとワンフレーズ弾きだした。すごい。すごくうまい。驚いた。なんだこの人は。得意な歌はアルゼンチンの曲だといい、披露してくれた。素晴らしい。歌もギターも謎のメキシコ人の流しみたいに。そういえば、メキシコではあらゆるところで音楽がある。バーではバンドが歌い、屋台のテーブルにもマリアッチが回ってくる。あの、25年前の遠い記憶が蘇ってくる。あれは本当にいい旅だった。インターネットがない時代にしかできなかった、いい旅だった。 30年を超えてミナミでお店が続いて行っているのは、マスターに人がついているからだろう。うちは決して安い店ではない、というが、別段高いわけではない。むしろ、この人といろんな話をしながら酒を飲むのは殊の外楽しい。カードマジックも趣味と披露してくれた。ずいぶん器用ですねえ、と感心していたら、器用ではないから上手くなるんですよ、と笑った。
2019/6/28 写真と本文をすべて表示

メキシカンキッチン＆ドリンク El Charroの店舗情報

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ジャンル	メキシコ料理
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最初の口コミ: akira i 2019年06月28日
最新の口コミ: akira i 2019年06月28日
最終更新: 2024年03月26日 16:13

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