先日の土用の丑の日に「うな次郎」さんで生きたまま焼き上げるスタイルの鰻蒲焼きが小生の胃袋に強烈なダメージを与えてくれたのがよき弾みとなったのか、このお盆、帰郷序でに故郷伊勢の地で改めて鰻を食べてみようという気持ちが芽生えたのであった。我が生誕の地伊勢は海の物から山の物まで美味い物尽くしの土地柄であるが、鰻に関しても「宮川」や「櫛田川」が流れており小生が幼き時分は叔父に連れられてよく小舟で鰻取りに出かけたものである。特に「宮川」縁には沢山の鰻屋があって宮川の天然鰻を供していたのを記憶している。今は流石に需要を満たすだけの天然鰻は採れないようでキロ何万も出さないと食べられないと訊く。伊勢市内には50軒を超える鰻屋があるから殆ど今は三河湾辺りの養殖鰻で賄っているようである。だが、旨ければ養殖鰻でも結構、この日小生達は伊勢近郊の名店の中でも名高い「川十」さんにアタリをつけ津村町に向かったのであった。着くと風光明媚な山裾に如何にも高級感漂う構えの屋敷があり其れが「川十」さんであった。既に数組10数人がウエイティングしていたが30分も待てば座れるだろうと後列に並んで待つことにした。我々同様に噂を聞きつけ車で乗り付けている客ばかりであった。予想通り丁度30分で小生達の番となりテーブルに着くことができた。3人で使うには贅沢過ぎるくらいの大きなテーブルの脇からガラス越しに石庭が覗き鰻を食べるには勿体無いくらい中々の良き風情である。メニューには梅、竹、松、特上、櫃まぶしとあり梅と竹は丼、松と特上が御重になるようだ。因みに伊勢の鰻丼のご飯はタレを予めまぶしてあるのがご当地流である。小生達は特上(一尾)を注文した。デザート・コーヒー付きで¥3100とは寧ろリーズナブルではないか。う巻きを注文しアサヒとキリンの中瓶を一本づつ飲りながら焼き上がりを待つ。此方伊勢は関西風の腹開きで蒸さないやり方である。予め白焼きにしておき脂を落としておいた身に芳ばしいタレを掛けながらじっくり備長炭で焼くというのが伊勢では常識、蒸しの工程は経ず身の部分はふっくらと柔らかく皮目をパリパリカリカリに仕上げるのを良しとするのである。ビールが喉の渇きを癒しほんのりと酔いが感じられた頃、25、6分の経過で漸く恭しく鰻重がテーブルを飾る。蓋を開けると芳ばしい香りと共にこんがりと焼き色のついた肉厚の鰻が両の眼に飛び込んできた。見るからに美味そうだが兎に角山椒を振りかけ一口身を口に投じてみる。すると忽ち口の中で程よくふっくらとしながらも柔らかな身と炭火でかりっと焼かれた皮目とが辛口のタレと予想以上に絡み一体感を成して徐にとろくけてゆくのであった。即ち小生がこれまで頂いてきた鰻重の中でも最上の関西風鰻重であったのである。後は味わいつつも一気に、でも大切に且つ大胆に、勿体無いと思いつつもガツガツと胃袋に掻き込んでいくだけであった。ご飯も最良、タレも甘味を抑えた小生好みの辛口で文句なし、何度も言うが誠に結構な最上級の鰻重であった。肝吸いも品良く、伊勢沢庵と奈良漬の香の物も悪くない、デザートもコーヒーも美味しかったことを付け加えておこう。今日のお昼は此処を選んで本当にラッキーと神や仏やアラーの使者に感謝する小生達であった。周りを見渡せば既に誰も居なくなっている。まもなく午後3時、小生達がランチタイム最後の客となっていた。3人トータルにて12000円弱を支払い速やかに退店と相成る。門を出て振り返れば店の方々が丁重にお辞儀していてくれるのが見えた。少し嬉しくなった小生達であった。
写真と本文をすべて表示リーズナブルで美味しい、地元でも有名な落ち着いた雰囲気の鰻料理屋さん
カウンター席あり
禁煙
おひとり様OK
















