大阪人が蕎麦よりもうどんを好むのは間違いない事実だが、もちろん大阪にだって「蕎麦屋」はある。大阪で蕎麦屋というと、「更科」という屋号をよく目にするように思う。 更科は元々信州が発祥らしいが、大阪にも数えきれないほどの店がある。どの店もどこかの更科で修行をした人が、独立したり暖簾分けを受けたりした店らしい。 それら大阪の数多くの更科のルーツを辿っていくと、最終的には3軒の「更科」に行き着く、と聞いたことがある。そのうちの1軒が新世界にある「総本家更科」だ。 創業100年を超えるというこの店は、店構えも堂々と古めかしく、店内も歴史と格を感じさせる造り。古びた格天井にもその歴史の重みを感じる。 さて、急に冷え込んだ日曜日。買い物に出たのはいいが体がすっかり冷えてしまい、蕎麦屋飲みでもして暖まろうとこの更科にやってきた。 まずは熱燗をオーダー。この店の酒は賀茂鶴だ。 熱々の賀茂鶴をちびちびとやりながら、まず最初のアテはなたね。 なたねはたっぷりのお出汁の中に溶き卵を流し入れ、かき混ぜながら作る炒り卵のようなもの。古くからの大阪の家庭料理だ。 出汁のしっかりと効いたなたねを楽しんだ後は、にしんの姿煮。にしん蕎麦に乗っているあれである。にしん蕎麦は京都が発祥だが、大阪の人間も好んで食べるメニューだ。 アテ2品にお銚子でようやく身体もほっこりと人心地ついてきた。 ここらで締めの蕎麦と行こう。 この店で蕎麦屋飲みした後は、必ず締めは「石巻蕎麦」。 この店で初めて知ったメニューだが、関東の蕎麦屋では結構出す店も多いようだ。 石巻蕎麦は要するにかけ蕎麦に焼き海苔を入れたもの。他店では細かくちぎった海苔を使うところが多いらしいが、ここは大きな海苔が4枚ほど入っている。そして薬味として山葵と、大阪の蕎麦屋らしく刻んだ三つ葉。 芳しい海苔の磯の香りと、山葵、三つ葉の香りのハーモニーが癖になる味。腹の底からすっかり温まり、幸せな気分で店を後にした。 今や新世界といえば観光客でごった返す大阪随一の観光地。 その喧騒の中で、ひっそりと静かな時が流れるこの空間、とても好きな場所だ。
写真と本文をすべて表示通天閣近くの風格漂う老舗で味わう、出汁が光る心温まる丼と蕎麦
駅から近い
禁煙
ランチ営業あり
おひとり様OK


























