Takuya Hiraoka
表参道駅
フレンチ
三つ星の緊張感より、最後に残ったのは「いやあ、楽しかった」
常連の親友に予約していただき、念願だったレフェルヴェソンスへ。 ミシュラン三つ星、世界的な評価――もちろんそうした肩書きは知っていたけれど、4時間あまりを過ごして最後に残ったのは、もっと素朴な「いやあ、楽しかった」という感覚だった。 コースはPrologueからChapter I〜VII、Epilogueまで、文字通り物語のように進む。 黄金唐辛子のジンや薬草リキュールを使ったカクテルと季節野菜のクリスプから始まり、栄螺と伊勢海老のササニシキリゾット、自家製キャビア、白桃へ。序盤にいただいたモーゼルのリースリングが、魚介の旨味や塩味だけでなく、アクセントの白桃までを自然につないでくれたのが印象的だった。 続く「8月8日のお野菜の旅」では、その日使われる野菜が籠いっぱいに登場。水茄子、オクラ、ズッキーニ、胡瓜、トマト、ピーマン、マクワウリ……と、とにかく種類が多い。これだけ要素があるのに情報過多にならず、一つずつの野菜を食べ進めること自体が料理になっている。 シグニチャーの蕪は、4時間ゆっくり火を入れ、最後に無塩バターで焼き上げたもの。 蕪に4時間。 こちらは数分で食べてしまった。ちょっと申し訳ない。 熊本・花の香酒造「産土 香子」との組み合わせも美しく、柔らかい蕪の甘みに、酒の爽やかさと柑橘感がよく馴染む。 四万十川の天然鮎には、シルヴァン・パタイユのMarsannay 2023。鮎に赤、という組み合わせも面白く、肝やうるかの苦味、内臓的なニュアンスをマルサネがふわっと覆うように受け止めてくれる。 メインは親友の勧めで鴨と蝦夷鹿のダブルに。ミズナラの薪火で焼いた京都の鴨胸肉は、クリスピーな皮と美しい火入れが官能的。続く蝦夷鹿は茄子や黒にんにくと合わせ、タラゴンの青い香りと一緒に食べると、森林の中を駆ける鹿まで想像してしまう。 この二皿を通してM. ChapoutierのHermitage “Monier de la Sizeranne” 2008。20年近く熟成したエルミタージュが鴨から鹿まで追いかけ、料理が変わることで同じワインの表情まで違って見える。今回特に贅沢に感じたペアリングだった。 その後は鴨のコンソメとブーレットを使った手打ちパスタ、国産アルチザナルチーズ、ルバーブと無花果の葉を使ったデセールへ。最後のデザートにBollinger Roséという「〆シャン!?」も楽しい。 小菓子、落花生ミルクの“World Peace”、お薄、コーヒーまでいただいて終了。 皿数も素材数も技法も途方もなく多いのに、食後に残ったのは「豪華なものをたらふく食べた」という重さではなく、むしろ軽やかさだった。 そしてサービスも素晴らしい。同行者が小声で翌日の誕生日について話したあと、親友が店側に伝えようと席を立つと、すでにスタッフは把握して準備を始めていた。堅苦しさはなく、冗談も飛び交うのに、見るべきところはきっちり見ている。 食後すぐに思ったのは、「また違う季節に来たい」。 小市民ゆえ人生最高会計額を更新しましたが(笑)、まったく後悔なし。大満足の夜でした。 #フランス料理 #ミシュラン三つ星 #モダンフレンチ














