【ふらり夏の伊豆の旅】 伊豆半島の最果て、漁師町下田の銘女将酒場。きっとまた帰って来たくなる暖かなお店に出会えました。 そこかしこで印象的ななまこ壁が目に入る街、下田。駅前から少し離れた住宅街、下田八幡神社の門前にひっそり佇むお店です。暖簾に描かれた猫達がなんとも可愛らしいですね。店内にもいたるところに猫をモチーフにした置物があります。女将さんはかなりの猫好きなんだねぇ。猫好きな人に悪い人はいません。これは楽しい夜を過ごせそうだ。 こちらのお店は決まったメニューはなく、女将さんのお任せでその日の料理が出てくるスタイル。まずはお通しの『ひじきの煮物』で静岡麦酒の樽生をいただきます。なんとも立派なひじきは風味が濃いもの。軽く炙られた油揚げがトッピングされ、香ばしさを加えています。 続いて『いんげんとセロリの酢の物』。いんげんの酢の物なんて珍しいですが、これがまた美味い!ちょっと甘めの仕上げでいんげんの独特な食感とシャクっとしたセロリの小気味よさがいい塩梅でバランスしています。 前菜的な2品の後に『野菜のポトフ』です。じゃがいもに玉ねぎ、えのきにカリフラワー、豚肉が入る具沢山なもの。野菜の旨味が溶け出した滋味溢れるあっさりスープ。黒胡椒がピリっといいアクセントになっています。 下田で水揚げされた地物の『お造り』。今日は鰹に鯵、タコの3種です。この時期の鰹は脂が軽やかで爽やかな旨味を楽しめます。旬の鯵は身が甘いですね。たまらず日本酒にスイッチ。静岡のお酒『臥龍梅』です。冷蔵庫から好きなお酒を出して自分で酒器に注ぐシステム。辛口の純米吟醸はお刺身にぴったりです。 焼き物は『タカベ』。なんでも下田でも夏場にしか出回らない珍しい魚だそう。足が早いので流通にはなかなか乗らないそうです。小ぶりな鯵のようなシェイプで、産卵期前の7月がまさに旬。こってりした脂がたっぷりのっています。これは美味しいねぇ。 ちょいとここらで小休止。『鰹の酒盗』と『じゃこ山椒』でつなぎます。“酒盗”とはよく言ったもので、ほんのちょっぴり舐めるだけでお酒がクイクイ進むんですよねぇ。次の日本酒は由比のお酒『正雪』をチョイス。山椒がピリリと効き、ヒリヒリした刺激が続くほんのり甘辛なじゃこがまたいいアテになります。 『黒むつの煮付け』。鉄板の金目鯛じゃないところがニクいですね。こってりした甘辛なタレで煮込まれた身はしっとりほっこりして、金目鯛に負けないくらいの味わい。むつの出汁が出たタレだけでお酒が空いちゃいそうです。 次のお酒は『黎明』を。なんでも下田自酒倶楽部の会員だけで飲まれている、とってもレアなお酒だそうです。どっしりした飲み口は、こってりしたむつを迎え撃つのに相応しいもの。 試しに作ってみた品とのことで『イワシのピザトースト』が登場です。ぶつ切りのイワシを豪快にトッピング。チーズで一体感を出すなんてことはせず、イワシ、トマト、玉ねぎ、パンの主張をあえて調和させず、口の中で暴れさせるもの。こんなチャレンジングな一品が味わえるとは!こういうの好きですよ! 〆は『蕪の漬け物』に『明日葉入り餃子』。こういうなんてことないひと皿が仕上げにいいんですよねぇ。 いわゆる家庭料理ですが、地元の新鮮な食材を使った、ちょいと手間をかけた女将さんのセンスが光る絶妙な味わいの品々が楽しめます。気づけば、おおらかで気さくな女将さんを慕うご常連でカウンターは一杯に。帰りしなにトマトと酒盗をお土産に持たせてくれる心遣いも沁みますねぇ。 珍しい魚とお酒が楽しめる、まるで実家にいるような暖かさを感じられる良店。また来たいね。 ごちそうさまでした! #酒場 #旅グルメ
口コミ(4)
オススメ度:96%
メニューのない居酒屋