須坂ショッピングセンターのパルムにある喫茶店。 ウィンナーコーヒー¥330を注文。 レトロな雰囲気でゆっくりできるカフェです。 #須坂
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須坂は豊穣なり といったのは私だから大した言葉ではないのだが事実だ。さして広い範囲でもないのに様々なものが詰まっている、臥龍公園ありストレートタイガーあり、そしてパルムあり。 「パルム」 須坂駅から少しだけ歩いた場所にある、この古典的ともいえる『集合商店街』が好きなのだ。昭和44年日本が1番元気だったころオープンされたというこの施設は、高度経済成長期どこにでも人がたくさんいた時代に、今より明日をよくしていこう。未来はきっとよいものとなる。そんなピュアな気の横溢した「元気な空間」だ。磯崎新風の正面玄関ファサードなどピンピン飛び跳ねているようだ。 ここに昔ながらの、いや昭和テイスト満載の喫茶店があるという事はずいぶん前から知っていたのだが、ここに来るとつい「ホームラン亭」か「かねき」へと足を向けてしまう。それでは片手も両手も落ちてしまっているだろう。いずれにせよ、このままの状態でいられるわけもない。よし、この際だからお邪魔してみよう。 「ニュースコー」 どうも『スコー』の意味が分からない。ちょっと調べてみたら『須高』と書き、須坂、上高井郡小布施町、上高井郡高山村の3地域をこう呼ぶ。とのことだ。なぁんだ、とも思ったが『純喫茶』なみによい響きでもある。入口のすぐ脇にあるショーケースの食品サンプルはまことに正しく蝋細工だ。狭いせまい階段を上がった先にようやく現れる喫茶店は、カウンターに数席、あとは合成皮革のイスにデコラ張りのテーブルがいくつか置かれている。隣の気配が分からないように背の高い衝立で囲まれたスペースはもう少し薄暗い方が妖しげでよいのだが、そうなると一般的とはいえなくなってしまう。このままで充分に正しく昭和のかほりが漂ってくる。常連らしきおばちゃんたちが楽しくおしゃべりしているのも懐かしい風景だ。 「ナポリタンスパゲティ」450円 茹で置きと思しき太い太いスパゲティは、恐らくアルデンテなる洒落のめした立場であった事など記憶の片隅にもないであろう。現在の私は単にぶよぶよの、『ほぼほぼうどん』とさえいえる存在で、間違ってもパスタとは呼ばないでください。と語りかけてきているかのようだ。玉ねぎ、ピーマンそしてソーセージをケチャップで真紅に彩ったThe昭和第一弾!ともいうべきメニューだ。もちろん、タバスコをイヤというほどふりかけ、むせ返りながら頂くのが正しい食し方といえる。 可能であればナポリタンを大盛りか別メニュー、他のスパゲティかピラフを注文しようと考えていたのだが、ショーケースにこれを見つけてしまっては変更せざるを得ない。 「いちごパフェ」350円 『当店のおすすめ品』という黄色いステッカーに素直に惹かれてしまうのは、昭和中期生まれの性、もしくはDNAレベルにまで刷り込まれた「パフェへの憧憬」によるものとしか思えない。内容はといえば、少しのアイスクリームに大量の生クリームだけのものだが、何もかもが揃っていればよいというものではない。『いちご』と冠されながらただの一滴も果汁が使われていないであろう『いちごソース』がふんだんにかけ回され、白いクリームを紅く彩っている。紅白というだけでどこか嬉しくなってしまう。このピュアな大らかさが大切なのだ。生クリームは少々苦手ではあるがこれは許す、許さざるをえない。 ただ、 大好きなパルムではあるが一部を除いて大半の店舗がシャッターを閉じたままだ。かつての賑わいが伺いしれるだけこの風景が一層寂しく感じる。 「役目を終えた」 というのは身も蓋もない言い方だが、物事には終わりは必ずくる。耐用年数があるのは構造体だけではないのは、建物も人間も同じだ。 しかし、 このまま潰えさせてしまうのももったいないではないか。この大らかさこそ豊穣といえる。便利で嘘偽りの少ない(ないとは言わない)社会にはなった。昔はよかった戻りたいとは絶対に言わない、現代がもっとも幸せだとも思ってはいるが、もう少し寛容で大らかなものが必要ではないか。『かつて』を知らない、須坂市民でもない無責任な立場でしかない私が言ってよい言葉ではないが。