
日比谷公園の緑に囲まれた、クラシカルな洋館の中に佇む「森のレストラン」。
1903年、日比谷公園の開園と同じ年に創業した、日本最初の洋式公園にふさわしい歴史ある店。
創業から120年以上、この地で時代を見守ってきたシンボル的な存在でもある。
職場からほど近いにもかかわらず、訪れるのは今回が初めて。
同僚に誘われ、平日の昼に足を運んだ。
天候が不安定だったためか、客足はまばらで静かな雰囲気。
店内は広々としており、座席の間隔もゆったり取られているため、圧迫感はない。
ダークブラウンの家具に、暖色系の照明が柔らかく灯る空間は、シックで落ち着いた印象を与える。
テラス席も選べるようだが、この日は残暑が厳しく、迷わず室内の席を選んだ。
案内されたのは一番奥のテーブル席。
やや奥まった場所にあるため、落ち着いて食事を楽しめる。
席に着くと、重厚感のある分厚い表紙のメニューブックが目の前に置かれている。
どれも魅力的で目移りしたが、初志貫徹。
同僚からすすめられていた「ハヤシライス」を注文することにした。
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▪️ミニサラダ 250円
まずはベジファースト。
自家製ドレッシングはまろやかな酸味があり、野菜の甘みを引き立てている。
優しくどこか懐かしい味わいで、最初のひと品として心地よい。
▪️ハイカラハヤシライス 1,550円
ハヤシソースはグレービーボートに入れられて別添えで提供される。
これだけでも特別感があり、気分が上がる。
ライスの脇には自然な色合いの福神漬けが添えられ、日本の洋食らしい細やかな配慮が感じられる。
ハヤシソースをご飯の脇に丁寧に注ぐ。
ソースは粘度が高く、ご飯に染み込みすぎることなく、しっかりと形を保っている。
まずはソースだけでひと口。
牛肉や野菜の旨みが凝縮されていて、驚くほどの濃厚さ。
とはいえ、ただ濃いだけではなく、程よい酸味が全体の重さを和らげてくれる。
そのおかげで、食べ進めるうちに味わいがより深く感じられる。
もちろんライスとの相性も良好で、バランスの取れた口当たり。
全体的に完成度が高く、日本の洋食らしいどこか懐かしい味わいと、安心感のある一皿だった。
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会計は現金のほか、カードにも対応している。
接客は控えめで程よく、過度な演出もないため、気負わずに食事ができるのもよい。
昭和の「ハイカラ」な洋食を感じたいときに、静かに訪れたくなる店だった。