堺筋本町の夜、揚げ物の小宇宙と出会う
【今日のメニュー】 ミックスフライ定食(本日のエビフライ・一口ヒレカツ・海老クリームコロッケ・銘柄豚と玉ねぎのミンチカツ)¥2300 オフィス街の灯りがひとつ、またひとつと灯り始める堺筋本町。 ――腹が、減った。 仕事終わりの空腹は容赦なく俺の胃袋を揺さぶってくる。 今夜の目的地はすでに決まっている。 事前にWEB予約を済ませておいた『とんかつ KATSU華』だ。 予約必須の人気店だけに、事前に席を押さえておいて正解だった。 暖簾をくぐり、カウンター席へ滑り込む。 卓上の甘口ソース、辛口ソースのボトルを横目にメニューを一応確認するが、心は決まっている。 「ミックスフライ定食、お願いします」 しばらくして運ばれてきたお盆を見て、思わず胸の中で叫んだ。 素晴らしい。 なんという完璧な布陣だ。 大きな和皿に美しく並べられた揚げ物たち。 キャベツの緑とレモンの黄色が、黄金色の衣を引き立てている。 まずは海老クリームコロッケからいこう。 サクッ、心地よい音とともに、中から熱々のクリームが溢れ出す。 海老の濃厚なコクと旨味が口いっぱいに広がり、一気に胃袋が覚醒する。 お次は本日のエビフライ。 添えられたタルタルソースを纏わせて、かぶりつく。 プリッとした力強い歯ごたえ。 海老本来の甘みと香ばしい衣、そこへ酸味の効いたタルタルが完璧な追い打ちをかけてくる。 王道にして至高。 そして一口ヒレカツ。 小皿の塩を少しつけて口へ運ぶ。 柔らかい。 噛むほどに上質な肉の旨味が滲み出てくる。 衣は薄く軽やかで、油っぽさを一切感じさせない職人の仕事だ。 トリを飾るのは銘柄豚と玉ねぎのミンチカツ。 こちらは辛口ソースを少し垂らしてガツンといただく。ジューシーな肉汁と玉ねぎのやさしい甘みが噛むたびに溢れ出す。 すかさず青い和柄の茶碗に盛られたツヤツヤの白飯を口へ駆け込ませる。 うん、間違いない。 ご飯が止まらないぞ。 ここで一息、黒いお椀の味噌汁をズズッと啜る。 おや? うわ、美味いなこれ。 メインの揚げ物が美味いのは勿論のことだが、この味噌汁の出汁の深さは何だ。 ネギが浮かぶ温かい汁が揚げ物の余韻を優しく包み込み、口の中を見事にリセットしてくれる。 脇役になりがちな汁物まで一切の手抜きがない。 この店のこだわりは本物だ。 合間に挟む漬物の清涼感、キャベツのシャキシャキ感も心地よい。箸の手を止めることなく、夢中で食べ進めてしまった。 食後を見計らって出されたのは、ほうじ茶のミニアイスクリーム。 ひんやりとした冷たさと、香ばしいほうじ茶の風味が、揚げ物を堪能した後の口内を爽やかに締めくくってくれる。 このちょっとしたデザートの心配りが、なんとも嬉しいじゃないか。 ふぅ、完食。 完璧なる揚げ物の小宇宙。 前もってWEB予約をしてまで訪れる価値が、ここには間違いなくあった。 大満足だ。 ごちそうさまでした。
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