
山深き東濃。紅葉始まるこの時期だけ秋の栗会席ランチを頂ける料理旅館が中山道 しぶろくの四十六次の宿場町大井、今の恵那にあります。
ここはあまり知られていないのでお忍びに、こっそり使いたいお店。
宿場街の角地にあったため角屋と名付けられた創業1624年の旅籠屋、明治には旅館いち川と名を変え、いま14代、15代、16代の三人の女将からおもてなしをしていただけます。
秋の栗ミニ会席は3500円。絶対にお値打ちです。
風情ある暖簾をくぐり、旅籠屋の雰囲気を残す玄関から長い廊下を案内され、梅の間に。どの部屋からもお庭が見えます。
前菜は焼き栗、老茸、焼き茄子寄せ、栗麩田楽、ピーマン酒粕漬け、長芋の塩焼。
まずは素朴な旨味、焼き栗からスタート。
老茸は真っ黒な炭のように見えますが、しっかりとしたキノコの味がします。
ゼリー状の寄せからは焼き茄子がしっかり味わえ、これが美味かった!
栗麩田楽もまた味噌に栗の素朴な香りが負けず漂い美味。
続いて小鉢の栗胡麻豆腐。
お造りの鮪とあじめ胡椒こんにゃく。このこんにゃくも柔らかなゼリーのようなのですがピリリと後から胡椒が効いてくる。お酒が進みます。
ここで三代の女将がお部屋にご挨拶に。当地の歴史をご説明いただきます。
今年初の松茸の土瓶蒸しは、すだちを絞り爽やかに。お吸い物を楽しんだ後は、松茸、銀杏、海老をそのままいただきます。
秋の味覚、日本人に生まれて良かった。
海老のイガグリ揚げは揚げても栗の風味が残り強い一品。栗チップスや大葉の天ぷらと。
鉄鍋の栗を食べて育った栗旨豚の鉄板焼きはポン酢で。柔らかく、甘みが濃い感じがします。
栗のコンソメスープは、お粥のような優しい味付け。栗の素朴さにまた戻ってきましたね。
最後は恵那米の炊きたて栗ごはん。お出汁だけで炊き上げたかのように薄味で、栗味が引き立つようにしっかり計算されており、ついお代わりをお願いしてしまいました。美味かった!
栗のプリン山岡細寒天寄せをデザートにいただき、充分にお腹いっぱい。秋の味覚と栗でお腹いっぱいにする贅沢時間。
大正10年夏 この旅館で若山牧水が詠んだ句です。
屋根の上を さしおほいたる 老松の
小枝に遊ぶ いしたたき鳥
岐阜、東濃の秋は本当に贅沢です。