更新日:2017年04月14日
モスクワの日本料理は正直まだまだである。一番ポピュラーなのが「桜」でまずまず我慢出来るラインである。この度は同じ経営であるが支店の「椿」の評判が良いとの情報を得てロシア友多数と行ってみることにした。格別に立地が良い訳ではないがタクシーでセンターから20分程のエリアにあり不便という訳でもない。車で乗り付けると外観は中々オシャレ。ドアを開け中に入ると赤と黒のインパクトのあるインテリアで入口付近の着物のデコレーション以外は特に日本を意識した態とらしいデザインでもない。 此方のシェフは詳しいキャリアは尋ねなかったが樋口陽介さんといって30代半ばの好男子である。スタッフは皆ロシア人女性ばかりで英語は充分に通じるのが有難い。メニューは「桜」同様かなりの数である。分厚いメニューブックは写真入りで当地のロシア客に分かりやすいよう工夫されている。「Fumisawa」や「夢」と比べると値段も高すぎも安過ぎもしない中間帯に設定されている。本日の一品が45種類もありボリュームもそこそこある。この辺りをオーダーすると安く上げることができるだろう。小生達はこの中から14品をバラバラに注文した。シェフにすれば正に面倒臭い嫌な客である。しかし、だし巻き玉子や牛タン、揚げ出し豆腐、鯖寿司などどれも優秀な仕上がりであった。酒も色々と用意されているが日本からの輸入物は全体に値段は高め、オーダーには気を付けた方が良いだろう。ヒレ酒なども日本と変わらず美味いが量は日本の半分くらいしかないから高くはつく。ビールはキリンの生があって妥当だと思う。 この後、カニ玉スープ、鰻の柳川風、味噌汁とスープ系をテスト、ボチボチいけることを確認した。最後にカツカレーの味を確かめ此れはまだまだ伸びしろありと判断、これからはモスクワで美味いカレー屋をすればデッタイ当たると直感した。殆ど全員が満腹を感じ始めたためシメにすき焼きを頼んでオヒラキとすることにした。因みにすき焼きの流儀は色々あるがこちらのはモスクワ流無手勝順序不同ごった煮スタイルであった。しかし牛肉自体は上等のワギュウに相当するランクであったことを弁明しておこう。 樋口シェフに御礼を述べ名刺交換を済ませたあとカンジョウ、日本円で七人トータル4万円内外、小生の自腹で払ったかかなりリーズナブルであると感じた。最後に全員で記念撮影を済ませ徐に退店と相成る。外の気温はマイナス15°C、凍てつく風に震えながらタクシーに乗り込む小生達であった。
モスクワでホントに美味しいと思う日本料理店に出会ったことはない。カジュアルな感じの居酒屋料理を供する店はそこそこあってとりわけ当地の第一人者、荒川シェフ率いる「桜」や「椿」が使い勝手も良くて味も悪くないが、本格懐石料理店や割烹といえる店は凡そ皆無であると断言ができる。今回お邪魔した「青空」という店は立地はイマイチな場所にあるが内装的には格段に素晴らしく行ってみるだけの価値のある店であった。店に入ると料亭のようなしつらえで全て個室になっており商談などに最適な店であった。日本人の須藤さんという方が料理長で今回は席に同席してモスクワの日本食事情を体験を交えて色々と話して下さっなどして楽しい時間を過ごすことができた。 日本のキリンビールやサントリーウイスキーの酔いも相俟って話に花が咲いたこともあり、其れ程沢山お料理を頂くことはできなかったが満足な数時間と相成った。残念ながら須藤さんは既に退陣が決まっており、この「青空」には別の日本人シェフが入るとのことであるから今後の店のことは分からないとの話、此処は素敵な内装空間であるだけに長く存続して欲しいと小生は思った。須藤さんはこの日寿司や天麩羅、出汁巻や烏賊などの料理を小生に振舞ってくれたが天麩羅は中々美味い域のものであった。その他のものは日本の水準からは程遠いが須藤さんの料理愛は十二分に感じることができた。 もとより海外で本格日本料理を提供することは流通の関係から難しいことであるが、とりわけこの北の共産国家のロシア、モスクワともなると食材や調味料を揃えるだけでも困難でまともな出汁すらひけないのが現状なのである。そんな中で日本料理に挑んで居られる幾多のモスクワ在住日本人料理人の方々にあらためて敬意を表したいと思った一夜であった。「青空」は予算1万円程度、雰囲気からすればリーズナブルだといえるだろう。