
あれも食べた、これも喰らった。日本は実に便利な国であって、巴里や紐育、羅馬の有名店は軒並み本邦に支店を出している。鴨料理からピザ、ハンバーガー、パンケーキに至るまでなんでもある。東京は銀座だけの出店かと思っていると、知らぬ間に横浜や大宮まで展開していることがある。
そして、クッキーも例外ではない。各国の王室御用達、有名なバターを用いたもの、ドライフルーツを散らしたものや濃厚なチョコレートの香りを放つものもある。
しかし、色々と食べ比べてみるが、やはり私は泉屋のクッキーに戻ってくるのである。「釣りはフナに始まりフナに終わる」という言葉がある。吾輩が幼少のみぎりには、東京のどの家庭にもこのクッキーの四角い缶があって、玩具箱だったり、手紙入れに使われていたものである。つまり、泉屋のクッキーは東京人にとっては魂の故郷なのである。