
1日6食の限定ランチ。1500円。
まさかこんなにすごいランチに出会えるとは。京王多摩川ってなんなの?まともな商店街もないくせにその街にはとんでもないお店が隠れてました。昼過ぎから開店で明るいうちは日本茶の専門店、夜は日本酒を呑みながら創作和食の店らしい。通りすがりに店先に出された黒板を見かけてランチをやってることは知ってたんだ。けど1日6食だし並ぶのは嫌だなぁ、ご予算的にもちょっとなぁ、と二の足を踏んでいたお店。でも今日のメニューは穴子ご飯。その魅惑的な響きに抗うことなどできませんでした。
店の戸を開けていいですか?ときくとどうぞどうぞ、とご主人。先客なし。あれ、空いてる。心配することなかった。店先から想像してたよりずっと広い、時間から隔絶されたかのような落ち着いた店内。トイレに行ったら花の終わった桜の枝が活けてありました。風で折れたのが落ちてたのかな。若葉の緑が目に快い。ご主人は風流な方だね。
メニューはおまかせ一種類のみ。まずは穴子ご飯。穴子をふっくら焼いてひつまぶしにしてあります。香ばしく焼かれた穴子。身が厚くて脂がのっているのに後味はさっぱりしてる。なのにじわじわ口腔で踊る旨味と香り。なにこれ?おいしいーっ!本能の命ずるままガツガツ一気にご飯を掻き込みたくなる衝動を自制するのに苦労した。はぁはぁ。動揺をとりつくろいお上品に一口一口噛み締めながらいただきます。気が遠くなるくらい素晴らしい。薄く味付けられたご飯は粒がたって口の中でプチプチはぜます。何でいい店ってご飯炊くのが上手いんだろう。錦糸卵と青菜がさりげなく添えられて目にも鮮やか。味も鮮やか。
おかずは鶏肉のつくねと筍ワカメの煮物。つくねは口の中にいれた瞬間、旨味で知覚が飽和状態。塩はきいてるけど味付けが濃いわけじゃないんだよ。鶏肉や出汁や、あとなんだろう?とにかくその風味が理解不能なくらい濃厚。和食で味覚のメーター振り切られたのは生まれてはじめてかも。もう一品は高野豆腐とスナップエンドウとフキのお煮しめ。こちらはしみじみ柔らかい味わい。フキってこんなにおいしかったっけ?どちらもそれだけでご飯一膳食べれちゃうくらいの素晴らしさ。それと小皿が三品。お店の名前にもなってる野蒜を醤油漬けにして松前漬けに和えたもの。野蒜は今が季節だもんね。これは初めて食べた!エシャロットのようなサクサクした歯ざわり。埼玉に秘密の狩り場があるんだそうな。そうでしょうとも。ひと粒ひと粒が大きいもん。上品で控えめな味と歯応えの牛蒡のきんぴらがいいアクセント。ほっとする。塩をよくきかせた懐かしい人参と胡瓜の糠漬け。大量生産じゃないおいしい糠漬けを食べるの久しぶり。変な言い方だけど糠の香りがヌカミソ臭くなく好ましいなんて。この糠漬けをお茶受けにゆっくりお茶飲むだけで幸せだと言い切れる。お味噌汁は雑煮かと思ったら餅じゃないぞ、これ。香りが強い。自然薯?もふもふしてる。京風白味噌がとてもよくあってる。
一点の隙もないメニュー。堪能しました。完全KOで言葉もない。ご主人が椀や皿に蓋を戻す音を察して食べ終えて呆然としている私にお茶を淹れてくれました。今日の日本茶は鹿児島県知覧地方のお茶だそうです。ほのかな香り。ひと口啜ってびっくり。あまいっ!えー、高級なお茶ってこんなにはっきり味がするものなんだ。カルチャーショック。もうどうにでもして状態でお茶に浸りきる。
毎日来るのは無理だけど、これで1500円ならむしろ安いよ。ご主人はお茶を利くだけあって味覚嗅覚が信じられないくらい優れているんだね。ってーことはお酒もかなり期待大…?
もっと仕事してお金貯めよう。おいしいご飯のためなら頑張れる。
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