「味の記憶」について、お話したい。 私は、長崎で生まれ、大学から東京に出た。 そして、東京で働き、首都圏で還暦を迎えた。 そんな中、とある想いが、強くなるのを感じていた。 長崎で暮らしていた頃に食べていた、ひとつのメニュー。 それを、どうしても、もう一度味わいたい。 「カレーの夕月」。 創業は、昭和8(1933)年11月29日。 私が長崎に居た頃、一番の繁華街は、浜町アーケードだった。 そして、「夕月」は、浜町アーケードから脇に入ったビル2階にあった。 調べてみると、「夕月」は、2016年2月26日に移転されている。 現店舗は、ベルナード観光通り側のアーケード内。 喫茶ウミノ跡地にできた瀟洒なビルの1階だ。 訪問を果たし、メニューを拝見。 その途端、引き込まれるものがあった。 ベースとなる「夕月カレー」530円。 これに、茹でタマゴをトッピングしただけの「タマゴカレー」590円。 中高生の小遣いでは、なかなか豪華なトッピングには手が出せない。 そんな中で、空腹を満たすべくチョイスしていたメニューだ。 これを、ミニサラダ、ドリンクとの「セット」790円でお願いすることにした。 カレーのビジュアルが、もう、たまらない懐かしさだ。 鮮やかなオレンジ色。 ライスを取り巻く、三日月形の盛りつけ。 この、色と形が、店名「夕月」の由来だ。 カレーを、口に、そして味わう。 その瞬間、舌先から、記憶野へと刺激が繋がった。 私の記憶力は、若いころから良くなかった。 今では、Rettyに記録しておかないと、昨日食べたものを忘れてしまう。 ましてや、味覚となると言葉にもできないあやふやなものだ。 そんな私だが、これだけは、間違いない。 記憶の根底に、こびりついていたあの味わいだ。 スパイスではなく、感動に痺れる。 「夕月」の創業は、86年前だ。 スパイス感はあるが、流行りのスパイシーなカレーではない。 スパイスを包み込む、まろやかな優しさこそがかなめ。 私が言えるのは、このまろやかさが、小麦粉や、溶け込んだ野菜由来のものだということぐらいだ。 「夕月」の2代目が、初代の味を守り続けてくれていたことに感謝する。 「夕月カレー」の色あいと味わいの秘密を知っているのは、2代目だけだという。 店内の壁面に、旧店舗のモノクロ写真が飾られていた。 カレーとともに蘇る、やさしい記憶。 中高生の時、「歩け歩け大会」に参加した時のことを想い出す。 長崎の海岸を、一夜かけて歩いた。 その夜は、満月。 その月は、幻想的なまでに鮮やかなオレンジ色だった。 10代の私が見たオレンジ色の月と海へ向って、60代の私が叫んだ。 でも、記憶力に欠陥があるので、何と叫んだか思い出せない。
駅から近い
カウンター席あり
禁煙
PayPay決済可
ランチ営業あり
長崎で愛され続けるレトロな赤いカレー、懐かしの味わいを堪能
長崎にある、昔から地元で親しまれているカレー専門店。給食を思わせるほどサラサラとした食感のカレーは、鮮やかな赤色で見た目にも驚きがありますが、辛さは控えめ。伝統的な製法で守られてきたその味は、長崎のソウルフードと呼ぶにふさわしく、地元の方々に長年愛されてきました。現在は限られた店舗のみで味わえる貴重な一皿です。懐かしさと安心感、そして珍しいビジュアルが特徴です。


























