更新日:2019年03月28日
【 台南で強くお勧めしたいバー。】 重厚なエントランスで暫し考える。またである。目の前にある扉にはノブがない。左に洗面ボウルがあり、上から照明が照らされている。さっきの店は壁一面のブリックブロックの一つがスイッチになっていた。この店は壁面にスイッチらしきものはない。 台湾で三件目のバー。どのお店もエントランスは気合が入っている。それはどちらかというと、来るのを拒むのではなく、始まりの楽しい仕掛けに思う。 結局私はこの扉を、たまたまタイミングよく出てきた客に開けてもらった。なるほど、しかもこのお店は入口と出口は別になっている。 私がこのお店に来たかったのは、その空間の作り方に興味があったからだ。白くて明るい空間。バーの設計としてあまり見たことがないし、それがどう機能するのかを見てみたかった。寧ろ、機能できるのか?という方が正しい。 店内に入ってほぼ埋まっているカウンターの席に。メニューはコースのように書かれている。前菜からデザートまで。私はデザートの中にあるグラスホッパーを頼んだ。バッタの似合うお店である。 広く相当にゆったりと作られた店内の天井高は高く、音の抜けと反響が心地よい。私はバーは圧倒的に暗い方が好きで、カウンターにはピンスポットの30度ハロゲンの灯りが落ちてたらいい、ぐらいに思っていたが、明るく白い箱は爽やかで気持ちがいい。明るいので様々ごまかしが効かない分、清潔でシャープな店内の良さが伝わる。 深夜に、こういった設計で酒を飲ます店があっていい。寧ろ、あった方がいい。あの入り口は外界から遮断する機能を果たしている。故にこの、白い箱が成立している。もし入り口がガラス張りで店内が見えてしまったら、この居心地の良さは成立しない。 美しいブルーグリーンのグラスホッパーが出来上がる。植木鉢に育っているミントを千切って散らす。元々はプースカフェスタイルのフロートロングレシピだったが、シェークすることによりショートにレシピが変化したカクテルである。 この白いキューブは本当によくできていて、居心地がいい。それはこのキューブが人を選んでいるという事もある。薄暗いバーと客層が違っていて、寧ろこちらの方が大声で話すような人もいない。客層も若めだけど、上品でいい。そう、美術館に来るような客層。美術館で騒ぐ人がいないのと同じである。 私は壁際の本棚にノーマの本を見つけ、それを読みながら飲んでいる。ノーマの手にかかれば卵もこんなにも美しく盛り付けられてゆくのかと感心する。本棚には他にも興味深い本が並んでいる。 大きな写真集を見ながら酒を飲むためには、この照度が必要だ。一般的にこんなに照度があったら白けてしまいそうだけど、そんなものはただの思い込みであり、空間をうまく作ればそれはとても上質なのだと感じることができる事を魅せてくれるバー。 そんな空気を感じに、台南にお越しの際は是非バー巡りを。こちらもカクテルは300元から、となっています。