
【雰囲気】
東武東上線 新河岸駅から徒歩2分。
早ければ17時には『割烹 藤』の白看板は点灯している。
ガラス戸から一歩なかに入ると、店内は少し薄暗い。微かな生魚の香り、ラジオの音声。
カウンターの奥に立つご主人が、笑顔で「いらっしゃい」と出迎えてくれる。
今年で70歳。ここの厨房に40年間たち続けている方だ。
重厚で光沢のあるカウンターに腰掛け、ご主人直筆のメニュー表と対面する。値段は高からず安からず。食材は全て国産に拘っている。
立地の関係で、かなりの確率で客はいない。1人で静かに飲みたい時、この店以上の場所はそうそうないだろう。
【料理】
お通しは350円。週替わり制だが日によって必ず細かい変化がつけてあって飽きることがない。
夏季であれば夏野菜を使った煮物が出てくることが多い。ご主人のご家族が農家を営んでおり、常に新鮮な野菜を持ってきてくれるのだとか。
個人的に楽しみなのが、秋に出てくる筋子の大根おろしのせだ。筋子の程よい塩気と、新鮮な大根おろしの甘みが絶妙なバランスである。
他、時期によっては刺身、刺身の納豆和え、里芋の含め煮、野菜と小魚の酢の物、馬刺し、鳥や豚の酒蒸しなどバラエティー豊か。
手間ひまを惜しまない1品ばかりで、どれも大変美味しい。
お通しなんて迷惑だという人(筆者もそうだった)も、ここのものには満足すること間違いなしだ。
ビールはスーパードライ、キリンラガー。日本酒は冷なら高清水、燗なら土佐鶴。これを市場から仕入れたばかりの旬の魚と合わせる。
何を食べても美味い店だが、魚の美味さはとにかく筆舌に尽くし難い。本当に良いものだけを最高のタイミングでのみ出してくれる。
大体が400円から850円。味のわりに値段が安すぎる理由を訊くと、従業員がご主人1人でかつ、楽しみ半分でやっているからこそだと教えてくれた。
拘りの酒と肴。優しいご主人。静かな空間。新河岸に来る機会があれば、『割烹 藤』に足を運んではいかがだろうか。