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“お客様の本音に向き合い続けた味”
ケンズカフェ東京 オーナーシェフ/ 氏家 健治
新宿御苑にひっそりと店を構える「ケンズカフェ東京」。こちらのお店では1本3000円のガトーショコラが飛ぶように売れている。その人気のガトーショコラをひとつひとつ手作りしている方こそが、オーナシェフの氏家さん。そんな彼の素顔に迫ってみた。
今でも毎日アクセスログのチェックやエゴサーチはしています、インターネットは本当に色々なことを教えてくれます。
■氏家さんはもともとパティシエだったのですか?
そもそも私はパティシエではなく、イタリアンのシェフでした。「ケンズカフェ東京」も1998年にイタリアンレストランとしてオープンしました。その頃はイタリアンがはやり始めた頃で、もっとカジュアルにイタリアンを提供できたらという思いでお店を立ち上げました。
■そうだったのですね、イタリアンのお店をされているときはどんな感じだったのですか?
オープン当初はカフェスタイルのイタリアンで、ランチとディナーを提供していました。場所柄オフィス街なのでランチのお客さまは安定してきていただいていたのですが、ディナーとなるとなかなかお客が集まらない。3年くらいすると経営も大変になり、自分の給料がないままになんとか店を維持し続けていくつらい状態が続きました。そんなとき当時やっと普及しはじめたインターネットに出会ったのです。2003年頃だったと思います。
■当時はかなりご苦労したのですね。ところでインターネットはどのように活用されたのですか?
最初はグルメサイトの草分けである「ぐるなび」を使ってレストランの情報を発信しました。人にお願いするお金はなかったので、自分で勉強をしながらホームページを更新していました。幸いにも大学時代、写真を勉強していたので料理の写真は人に頼むよりおいしそうに撮ることができたんです。
情報発信をしていると、当時はインターネットを活用する飲食店も少なかったせいもあり、ホームページをみたお客様からの宴会の予約がどんどん入ってきました。そのおかげで経営がなんとか安定するようになり、そこからネットを積極的に活用するようになりました。
■シェフをされながら実際にインターネットの活用もご自身でされていたんですね。
ネットは本当にいろいろなことを教えてくれます。アクセスログをみるとどんなキーワードでアクセスされたかが分かりますし、その情報をもとにサイトを最適化することで検索エンジンからの集客を強くしてきました。アクセスログをみていると情報を客観的にみることができ、分析するクセがついてくるんですよね。現在もSEO対策や口コミ対策は怠らずに行っています。毎朝ケンズカフェやガトーショコラのキーワードをウオッチして、お客様がどう思っているか定点観測をしています。
値上げする決断は難しいけれど、その先に待っている世界も大きい。
■なるほど、インターネットの活用でお店が軌道に乗ったということですが、今のようにガトーショコラに1本に絞るきっかけは何だったのでしょうか?
レストラン時代は最後のデザートとして、自信をもってガトーショコラを提供していました。ある日、女性のお客さまからおいしいので持ち帰りたいといわれて何となくガトーショコラを販売することにしたんです。するとその年のバレンタインのときに何もしなくても30本売れたんですよね。もともと味には自信があったので、いろいろと他のお店のガトーショコラを食べ比べて調査してみたんです。するとうちのほうが断然おいしい。こだわりの材料と出来立てにこだわっていたので、他とは全然違ったのです。これはいけるのではないかと思い、2008年からガトーショコラ1本に絞った店に路線を変更しました。
■1本3000円という値段ですが、最初から3000円だったのでしょうか?
最初の値段は1300円でした。そこから1500円、2000円に値上げして、最終的に3000円となりました。当初より容量は半分、値段は2倍以上と、実質的には4倍以上の値上げをしたことになりますが、3000円にしてから本格的にブレイクして日本中のお客様から高い評価をいただきました。
現在のガトーショコラはヴァローナ社の「グラン・クリュ・マリアージュ」と「カルピス特撰バター」を使用しています。またパッケージングにもこだわり、欧米の高級ブランドを参考にした高級感あるデザインにすることで、贈り物にも喜んでいただけるようにしました。「ケンズカフェ東京のガトーショコラ」というブランドとして常に気を配っています。
ガトーショコラが「ありがたみ」になるまで。
■ブランディングにも気を配っているんですね。
ただ最初から順調だったわけではないので、ガトーショコラがメインにしつつも夜の宴会も引き続き営業していました。その頃パーティの最後にガトーショコラを出したところ、お客様に「レバ刺しですか?」といわれたこともありました。お客様の多くはガトーショコラ自体を知らない方が多く、それが現実でした。
それが有名な方に紹介されたことで口コミになり、多くの方に知ってもらうようになりました。今でも貸し切りであれば夜の宴会をやっているのですが、パーティの最後にガトーショコラをお出しすると幹事さんが必ず「あの有名なガトーショコラです」と他の人がありがたみを付加してくれる。お店に買いにくるお客様も「ガトーショコラありますか?売っていただけますか?」とありがたがって買っていただく。ガトーショコラをブランド化することで「ありがたみ」という付加価値がつき、お客様に安心して買っていただけるんじゃないかと思っています。
■そんなこだわりのガトーショコラのレシピを公開されているとのことですが、他のお店にまねされたりしませんか?
レシピを公開しているのは、このレシピを後世までに残しておきたいという想いがあるからです。そして他のシェフが私のレシピでガトーショコラをつくることは、自分以外の人がレシピを進化させるために実験しているようなものです。他のシェフの試行錯誤は刺激にもなりますし、新しい発見もあります。お客様のし好は時代によって変化するので、他者から自分も学び、時代にあったガトーショコラのレシピを進化させたいと思っています。
■ところでそのお客様の好みはどうやって情報を集めているのですか?
お客様の本音を常に意識しています。知人などに味をみてもらうこともあるのですが、それだといいことしかいってくれない。そこで口コミサイトやSNSなどを毎日チェックしてお客様の本音を拾っています。そして同じような感想を2~3個見つけたら気にとめておき、参考にするようにしています。例えば、ここ数年で甘いという意見がいくつかあったので、タイミングをみて甘さを控えるレシピに変更しました。今と数年前と比べると若干甘さ控えめのガトーショコラになっているんですよ。
■常に努力を怠らない印象の氏家さんですが、今後について教えていただけますでしょうか?
今後もやはり現状に甘んじることなく、お客様の半歩先を進んでいたいですね。ガトーショコラで名前を知っていただき、今では世界有数のチョコレートメーカーにも一目置かれる存在にまでになりました。ガトーショコラを作っている小さなお店が直接取引をしているんです。これはすごいことだと思います。
そして5月くらいに新バージョンのガトーショコラをご提供する予定なのですが、そこで使うのがチョコレートの神様といわれる「DOMORI」創始者ジャンルーカさんによる専用チョコレート。今よりさらに進化したガトーショコラになるはずです。
その他にも「ケンズカフェ東京のガトーショコラ」をブランド展開をしてみたいですね。日本発のブランドとして海外でガトーショコラを販売するのもよいかもしれません。自分は優秀なシェフじゃないからこそ、こうできないかなといろいろ考えてきました。これからも他のシェフではできないことをやっていきたいと思っています。
幼少時代に「素晴らしい料理人」というテレビ番組でフランス料理を知り、今でもフランス料理が一番好きとおっしゃる氏家さん。そんな氏家さんのおすすめのお店は
こちら
。
「ケンズカフェの氏家シェフが通うお気に入りの名店12選」はこちら
氏家 健治(うじいえ けんじ)
1968年東京生まれ。ホテルオークラ東京、赤坂アークヒルズクラブ、レストランマエストロ等、高級店で修行を重ね、1998年、東京・新宿御苑前に「ケンズカフェ東京」を開店。テレビや専門誌などで、調理指導や料理解説をするほか、プロ向けの講習会・講演会も日本全国でおこなっている。自身の体験をまとめた書籍「1つ3000円のガトーショコラが飛ぶように売れるワケ 4倍値上げしても売れる仕組みの作り方 (SB新書) 」が好評発売中!
「ケンズカフェ東京」
住所:東京都新宿区新宿1-23-3 御苑コーポビアネーズ1F
電話:03-3354-6206
URL:
http://retty.me/area/PRE13/ARE1/SUB105/100000612132/
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インタビュー
ケンズカフェ東京 オーナーシェフ
/ 氏家 健治
ブッフェ評論家・グルメジャーナリスト
/ 東龍
アタゴール オーナーシェフ/曽村譲司
味博士 / 鈴木隆一
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