【蔵出しロンドンパブ数珠つなぎ 4/7「掃除」】
「ここは掃除をしないことで名を馳せたパブなのだ」
「はぁ?」
「名古屋に喫茶マウンテンという大変高い山があるんだが、そこは倒産寸前にヤケクソで徹底的に不味い料理を作り出した。するとなんということか、あの難攻不落の山に登れ!と、今や行列ができる有名店になってる。」
「突出したコンセプトワークが結果を出したわけね」
「そう、イチゴのスパゲティは麺にまでイチゴシロップが練りこまれている逸品だ」
「なかなかにおぞましいけど、ちょっと興味がでちゃうわね」
「1850年代、馬の糞を掃除して、それを肥料として売り生計を立てていたディックさん、あだ名はダーティディック。彼の名前を冠しているんだけど、順風満帆な人生を送っていたディックさんは婚約者の突然の死で人生が一変してしまったんだ。悲しみにうちひしがれダイニングルームにこもり、その扉を2度と開くことなく、ネズミやクモを食べて一生を送ったといわれているんだよ。まあその場所がパブになったんだけど、1742年の創業以来このパブではディックさんに敬意を払い1度も掃除を行なったことがなく、ネズミやコウモリの死骸がそのまま放置されていると、言われているのだ」
「全然綺麗じゃないの」
「ダイソンの国だから」
「関係ないわよ」
「排気の綺麗なサイクロンだよ」
「私はペーパーバッグでゴミを捨てるやつが好きよ、もしくはルンバ」
「知ってた?ルンバ作ってる会社はArielという、水陸両用の地雷除去ロボットも作ってたんだ、これね、凄いの、カニ型ロボット。蟹の形を模しているんだよね。人魚姫の名前なのに」
「そのゴミのような知識に、乾杯」
「なるほど、私のような人間がここにはいっぱいいるのだろう」
掃除をしてなければ特別であるが、今やお店は普通に綺麗である。ロンドンという街はしかしながら、お店にそういう逸話が残っているところがどこか愛嬌があっていい。
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