お世話になっているお客様に誘われて初訪問。土曜日の雨の北浜は人が少ない。ビルの近くに自転車を止めエレベーターで上がる、5階の扉が開くといきなり店内とは凄い構造のビルである。予想と違ってショットバーのような店であった。四十絡みのイケメン店主の丁重なお出迎えを受けカウンターに座りハートランドビールをオーダー、S氏夫婦に予約して頂いているコース料理を待つ。其れにしてもちゃんとした厨房はあるのだろうか、まともな料理を食べさせてくれるのだろうか、などと心配になる程こじんまりと狭い店内である。まあグルメなS氏のご案内だから大丈夫な筈だと思いつつも内心不安が募りゆく小生であった。正面のボトル棚には村尾やら森伊蔵やら垂涎の承知が並んでいる。料理は兎も角、酒はでったい旨いであろうと確信した。恐る恐る森伊蔵の値段を聞いてみると何と一杯1200円と超リーズナブルなのであった。思いっきり飲む気満々となり森伊蔵、村尾と立て続けに注目、料理の登場を待つ。待つこと暫し最初の一皿は千葉産蛤とホタテ、蛤は桑名揖斐川産に負けじ劣らじの上物、この一皿でホッと安心、Sさんの見立てはやはり素晴らしいのだと納得した。続いてはお造り、ハガツオにアオリ烏賊、黒鮑である。中でも宮城の黒鮑の雄は甘みや旨味が交錯して最高、態々雄の貝を入れるという店主の拘りぶりである。酒は蒼空のオリ絡み、アオリ烏賊とも良くハモった。その後静岡のアオサ海苔と北海道さん白子の温物で口を潤し、愈々メインの料理が二品、まさか中華が出てくるとは意表を突かれてしまったが尋ねれば此方のイケメン店主はあの天下の名店「銀座アスター」の出身だそうな、成〜る程である、だから旨い訳だ。国産和牛と柳松茸のXO醬炒めに辛い朝天干辛椒の酢豚のような一皿であったが流石に卓越した技量を感じた。ラストの締めは和牛霜降りの鮨、無論文句などある筈もない。デザートは無かったが、途中から参加したイケメン主人の個性的なる美人奥方の楽しい会話も相まって酒もビールも果てしなくさしすせそ、酔いも深まりらりるれろ、最高にディープな一夜となったのであった。それにつけても雨の北浜は中々の情緒、S氏夫婦に御礼を申し上げ、自転車に跨りふらふらとライオン橋に向かいて消えてゆく小生であった。あとはおぼろ、橋上から眺める堂島川が小雨に煙っていた…