店舗正面と向き合う。 重厚な扉以外、何もない。 いや、小さな照明の下に、小さなプレート。 繊細な書体で記された「蕪木」の文字が、読み取れる。 扉のかたわら、足元にも、小さな板が立て掛けられている。 屈み込むようにして読み取る。 黒い板の殆んどを余白とする、小さな文字で、「営業中」とだけ記されいる。 此処は、台東区鳥越にある、珈琲とチョコレートのお店なのだが、そんなことは、何処にも書かれていない。 扉を押し開ける。 珈琲焙煎師であり、チョコレート技師である店主が、静かに出迎えてくれる。 店主は、珈琲、カカオ、チョコレートの研究・開発・指導に携わって来られた方。 此処は、そんな店主が、2016年11月7日に開いた店舗。 錬金術の工房、若しくは、主人と客が向かい合う茶室と言って良い趣き。 珈琲、若しくはチョコレート色に沈み込む店内。 奥行きのあるカウンターを挟んで、店主と相対する。 僅かな照明の下、焙煎機や、磨き込まれた金属器が、光を放っている。 流れるピアノソロは、無音以上に静か。 ブレンド珈琲三種から、メニュートップの、「オリザ」650円を選択。 これに合わせる「無垢チョコレート」200円も三種あるのだが、その選択は、店主にお願いした。 カウンター上に、金銀銅の三色に輝く茶筒状の金属器が置かれている。 これに、ブレンド珈琲三種の豆が、入っている。 豆を、木皿に取り出し、検分する。 音の静かな電動ミルに通し、ネルドリップ。 湯は、注意深く注ぎ込まれる。 珈琲の粉が、湯を吸ってネルの中を上がって来る。 しかしながら、珈琲は、ネルの中にとどまり、下のサーバーには降りて来ない。 ところが、ネルの中身が、その縁に達し、更に膨れ上がろうとした瞬間、堰を切ったように溢れ出してくる。 カップを温めていた湯を切り、布で拭う。 珈琲をサーバーからカップへ注ぎ込む。 そして、客へと差し出す。 その所作には、一切の無駄がない。 繊細で、優雅。 珈琲を口にした瞬間、目の奥に、華やぎのある鮮やかな色彩を感じた。 目を閉じると、今度は、色彩ではなく、凛とした余韻が広がる。 店主が選んでくれた「無垢チョコレート」は、「果香」。 一切れを。口に含み、歯を立てる。 割れる瞬間、赤みがかった光が見えた。 鮮やかな酸味。 次の一切れは、口中で溶かしてみる。 カカオ分が70%もありながら、木苺のような味わいが滑らかに広がり、満たされる。 芳醇な至福の時。 願わくは、この甘美たる安らぎが、とこしえたらんことを。
南 たすくさんの行ったお店
-
YOU
東銀座駅 / 喫茶店
- ~2000円
- ~2000円
-
うどん 丸香
神保町駅 / 讃岐うどん
- ~1000円
- ~1000円
-
アカシア 新宿本店
新宿西口駅 / 洋食
- ~2000円
- ~2000円
-
カリーライス専門店エチオピア 本店
神保町駅 / カレー
- ~1000円
- ~1000円
-
神田まつや
淡路町駅 / そば(蕎麦)
- ~1000円
- ~2000円
-
田中そば店 秋葉原店
末広町駅 / ラーメン
- ~1000円
- ~1000円
-
自家製麺 伊藤
赤羽駅 / ラーメン
- ~1000円
- ~1000円
-
共栄堂
神保町駅 / カレー
- ~2000円
- ~2000円
-
むさしや
新橋駅 / 洋食
- ~1000円
- ~1000円
-
ガヴィアル
神保町駅 / カレー
- ~2000円
- ~2000円
-
丸五
秋葉原駅 / とんかつ
- ~3000円
- ~3000円
-
味坊
神田駅 / 中華料理
- ~1000円
- ~4000円
-
ムルギー
渋谷駅 / カレー
- ~2000円
- 営業時間外
-
中華そば 青葉 中野本店
中野駅 / ラーメン
- ~1000円
- ~1000円
-
さぼうる2
神保町駅 / 喫茶店
- ~1000円
- ~1000円
-
一滴八銭屋 新宿本店
新宿駅 / うどん
- ~1000円
- ~4000円
-
九十九ラーメン 恵比寿本店
恵比寿駅 / ラーメン
- ~2000円
- ~2000円
-
センターグリル
桜木町駅 / 洋食
- ~2000円
- ~2000円
-
麺巧 潮
小川町駅 / ラーメン
- ~1000円
- ~1000円
-
つじ田 神田御茶ノ水店
小川町駅 / つけ麺
- ~1000円
- ~1000円